卵の孵化について
先日、お客様とお話した際に、以下のような質問を受けました。
ヘラクレスオオカブトを飼育して、産卵をさせた時、いついまで経っても孵化しない卵がありますが、この卵はこの先、孵化するのでしょうか?
卵の孵化、幼虫を心待ちにしている方にとっては、とても卵の孵化が待ち遠しいものですよね。その気持ちよく分かります。 今日はあくまで私、Shiho独自の考え方にはなりますが、採卵やその卵の孵化について、私の認識している範囲内でご紹介したいと思います。
<採卵とは?>
通常、ヘラクレスなどの大型種を産卵させる場合、たいていの皆様は採卵する方法を取られる傾向が強いと思われます。採卵とは、その名の通り、卵を採ること、つまり孵化前の卵を卵の段階で、人の手によって割り出し、取り出すことを言います。
<なぜ採卵しないといけないのか?>
本当ならば、そのまま孵化させるのが一番よいのですが、ヘラクレスなどの大型種の場合、♀でも体長が60~70mm程度あります。
たとえ衣装ケースほどの大きさで産卵セットを組んだとしても、活発に動き回る大型♀にとっては狭いもので、放っておくとすぐに産卵するためのスペースがなくなり、産卵がストップしてしまう可能性があります。
また狭いケース内を長期間にかけて動き回るので、先に産み付けた卵を♀自ら潜っていくことによって傷つけてしまう可能性もあります。
そこで、本意的ではありませんが、そういう問題点を少しでも軽減させる為に、人の手によって産んだ卵を卵のままで回収しようとするわけです。これを採卵と呼んでいます。
<採卵>
上記画像が採卵した卵たちです。
この場合、プリンカップ860ccに産卵セットで使用した同じ種類の新鮮なマットを軽く入れ、まずは無造作に卵を回収します。
そしてこれは、その卵をきれいなケースにマットを入れ、産卵セットと同様に固めて、マットにプラスドライバーなどで密集しないほどに等間隔で穴を空け、その穴に卵を落としいれた様子です。
※注意点※
この時使用するマットも産卵セットで使用した同じ種類の新しいマットで行うことが望ましいです。なぜならば、これから卵が孵化するまでの期間に少しでもダニなどの発生を少なくする方が良いからです。
産卵セットで使用していたマットでも構わないのは構わないのですが、すでに産卵セット時より幾分かは時間が経過してしまっているので、少なからずダニなども発生していると考え、あくまで私の方法ですが、このようなセッティングで行うようにしています。
後は、その卵の上から新鮮はマットをかぶせればOKです。マットをそのままかぶせるので、卵室の空間はなくなってしまいます。この卵室の空間をあえて再現したい方は、タイベスト紙等の水分をはじくような紙を上の画像の状態にかぶせ、その上からマットをかぶせるというやり方もありますが、私はその方法はあまり取りません。もし万が一その使用した紙にダニなどがついていたら・・・と思うからです。しかしあくまで私のやり方ですので、ご参考までに。
<孵化する卵としない卵>
そして、その後、1~2ヶ月放置してケース底などに幼虫が見えてきたら、回収します。しかし、産卵から2ヶ月近くも経過しているのに、全く孵化しない卵も多く存在します。
上記画像の卵は白くまん丸い形をしています。素晴らしく丸く白い卵。こういう形の時は有精卵、孵化する確率が高いと思われる卵です。
上記画像の卵は形もまん丸ではなく、少しいびつな形をしています。色合いもオレンジっぽくあきらに先ほど画像の白い卵とは違いがあります。
このような卵の場合、あくまで確率ではありますが、孵化しない可能性が高いです。卵のままで、2ヶ月も3ヶ月もずーっとこのままの状態で経過します。
管理温度にもよりますが、卵は産み落とされてから基本的に約2ヶ月以内で大体は孵化してきます。それ以降も孵化しない場合は、だめな卵の可能性が高いと思われます。ただしグラントシロカブトだけは卵の期間が半年程度かかる場合がありますので、そういう種も存在するということは認識しておいて下さいませ。
産まれた卵が全て孵化するということはほとんどありません。勿論孵化率の高い場合もありますが、低いときは孵化率が10%程度、もしくは0%、全く孵化しない卵も存在します。
これを防ぐ為には、
・親♂♀の熟成はしっかりとさせること
・親♂と親♀の交尾はしっかりとさせること
・累代の代重ねには注意すること
・近親交配は極力避けること
他にもまだあるとは思いますが、大体は上記のようなマイナス要素を少しでも減らした上で、産卵セッティングを組むのが望ましいと思われます。
如何でしたでしょうか?上記が私、Shihoが認識している卵の孵化に関わるものです。勿論違っていること、私が認識している事以外にもやり方などがあるかもしれませんが、あくまで参考程度に読んでもらえれば幸いです。(^^)
5 Comments »
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すごく役にたちました。今年、サキシマヒラタを産卵させたのですが、なぜか1か月半以上も経つのにまだ孵化しないたまごがあります。羽化してからやっと3か月ぐらいたった♂だったので、まだペアリングにはちょっと早く成熟していなっかったのかな?と思っています。今日も何日かぶりに見てみたのですが、白っぽいのもあればオレンジ色っぽいのもあるんですよ。うーん。微妙なところですね。1匹でもいいから孵化してもらいたいです。
Comment by 天野進 — 2014年11月29日 @ 6:29 PM
すごく役にたちました。今年、サキシマヒラタを産卵させたのですが、なぜか1か月半以上も経つのにまだ孵化しないたまごがあります。羽化してからやっと3か月ぐらいたった♂だったので、まだペアリングにはちょっと早く成熟していなかったのかな?と思っています。今日も何日かぶりに見てみたのですが、白っぽいのもあればオレンジ色っぽいのもあるんですよ。うーん。微妙なところですね。1匹でもいいから孵化してもらいたいです。
Comment by 天野進 — 2014年11月29日 @ 6:31 PM
今日、2週間前に産卵セットに投入したダイオウヒラタの卵を採卵したのですが、卵が全部オレンジっぽい色でした。 これって普通なんでしょうか?
Comment by エアー — 2016年6月20日 @ 7:06 PM
エアーさん レスありがとうございます。 この日記記事の内容で、卵は白い方が良いというような書き方をしていますが、これはこの時の質問にあった「ヘラクレスオオカブトの卵」を示しているものです。 カブト系の卵は例外もあると思いますが、基本的に白っぽい色の卵が多く、また望ましいとされます。勿論オレンジ色の卵も存在し、孵化することも十分ありますが、あくまで傾向です。 その点、クワガタの卵は基本的にはオレンジ色をしている事が多いと思います。私がダイオウヒラタを産ませたときの卵もオレンジ色、厳密に言うと薄い肌色みたいな色合いでした。 それゆえエアーさんがおっしゃるオレンジ色の卵は悪いとは思えません。 今後その卵がゆっくりと真ん丸くなり、膨らんで、中の幼虫が透けて見えてきたら孵化の成功率も高くなると思います。 卵で採卵されたのでしたら、乾燥には十分注意をされて見守って挙げて下さいませ。 無事孵化されることをお祈り申し上げます。 飼育日記担当:Shiho
Comment by tsukiyono — 2016年6月20日 @ 10:34 PM
ありがとうございます。 参考になりました。
Comment by エアー — 2016年6月21日 @ 9:12 PM