サタンオオカブトの飼育【産卵方法編】
先日の日記でご紹介した
「サタンオオカブト」
前回は【幼虫飼育編】をご紹介させて頂きました。
【サタンオオカブト♀個体参考画像】
【飼育種】
和名:サタンオオカブト
学名 Dynastes satanus
産地:ボリビア
今回は【産卵方法】についてご紹介したいと思います。
と、その前に成虫になった♂と♀の熟成についてご紹介します。
<産卵が可能になるまでの熟成期間>
この熟成期間については、ひとそれぞれやり方や認識が異なります。ここではあくまで私:Shihoが実際にやっているやり方についてご紹介させて頂きますので、ご了承下さいませ。
あくまでも私の場合ですが、熟成を判断する時にまず一番重要になるのは「後食(エサを食べ始めること)開始の時間」です。
野外ものの個体は最初からエサを食べている事がほとんどで既に親虫としても熟成しており、即交尾~産卵が可能な個体がほとんどです。
しかし養殖個体に至っては、羽化から時間がそれほど経過していない場合、エサを食べていない個体がほとんどだと思います。後食とはエサを食べ始める事、この食べ始めの日時からカウントして、交尾~産卵へと移行させます。
エサを食べ始めて どれ位で交尾させるかは、種類によって異なります。あくまで私の場合ですが、サタンオオカブトは後食開始~約1ヶ月半~2ヶ月程度経過させてからペアリング(交尾)をさせるようにしています。
熟成の目安は個体によって個体差があり判断が難しいですが、一番食欲が旺盛になった時が目安の一つだと考える場合もあります。
この成虫の熟成は結構重要で、熟成が甘いと交尾を嫌がったり、また産卵する際にも無精卵を産んでしまう可能性があったりとよくない結果が出たりすることもあります。じっくりと熟成させた成虫で交配するようにしましょう。
<交尾方法>
次に交尾(ペアリング)方法ですが、大きく分けて2つのやり方があります。
それは、「ハンドペアリング」と「同居ペアリング」です。
【ハンドペアリング交尾の方法】
ハンドペアリングはは交尾欲が旺盛な大型カブト類でよく使います。クワガタでもニジイロやギラファ、オウゴンオニといった比較的体高のあるものに関しては上手くいく 場合が多いです。勿論体高が低いクワガタ(オオクワやヒラタなど)でもやり方次第では上手くいきます。ハンドペアリングの魅力は確実に目の前で交尾成功を確認出来るというのが大きな強みです。
サタンオオカブトの場合のやり方としては♀の上に後ろ側からそっと♂を乗せます。
背中の部分からフェロモンが出ていると言われているので、私は♂の口あたりを♀の小循板の辺りに置くようにします。
そうすると♂が♀のフェロモンを嗅いで やがて触覚をピクピク盛んに動かし始めたら交尾開始の兆しありと見ています。しばらくすると交尾を開始し、このタイプの交尾は一度交尾をしてしまうと時間 的にも結構長く交尾をしてくれる場合が多いです。
上記参考画像(ヘラクレス エクアトリアヌス)がまさにハンドペアリング時の様子です。
【同居ペアリングの方法】
同居交尾、この方法は、なかなか交尾してくれない、交尾完了まで見届ける時間がない、などといったハンドペアリングが難しい種によく使います。
やり方としては交尾時期を迎えた親♂と親♀を一緒のケースに一定期間(約1週間位)入れておくものです。こちら側としては手がかかるハンドペアリングと比べて、とても楽ですが、確実な交尾成立が見届けられない、同居内での♂♀の喧嘩が起こる可能性がある等のマイナス点もあります。
勿論自然界ではハンドペアリングなどは行われないので、皆同居交尾のようなものですが、すぐにどこにでも逃げられる自然界と違い、飼育管理下ではケース管理の為逃げられず、最悪の場合♀殺しが発生することもよくありますので、管理する際には注意が必要です。
私の場合はハンドペアリングが可能なものは全てハンドペアリングで交尾を行うようにし、ハンドペアリングが難しい種に関しては仕方なので同居交尾をさせるようにしています。
私はサタンオオカブトにおいてはハンドペアリングで行っておりますが、あくまでもお好みで・・・。
<産卵セット時の方法>
次はいよいよ産卵セット方法のご紹介です。
私はサタンオオカブトを産卵時には以下のセット方法で行います。
【産卵に使用するお勧めマット】
黒土マット、完熟マット
【産卵に使用するケース】
クリーンケースLクラス~衣装ケース中タイプ程度
【産卵のセット期間】
採卵する場合:1~2週間ごとに採卵し♀が死亡するまで行う
採卵しない場合:1ヶ月半~2ヶ月後に割り出し
【産卵管理温度】18~20℃(※重要)
【水分量(湿度)】
通常の設定よりほんの少し水分量多め。
(手で強く握って少し水が染み出る位)
【セット方法】
ケース底面を固く敷き詰め、
上部はフンワリと敷き詰めます。
セット方法を図示すると以下の様な感じです。
産卵セットの組み方の手順を画像を参考にしてご紹介したいと思います。
まずは産卵セットに使用するケースを準備。
今回はクリーンケースLサイズを使用します。
マットを大きなケースに出します。
サタンオオカブトの産卵セットに使用するマットのお勧めは完熟マット、もしくは黒土マット。
交尾は事前のペアリングで完了しているものと考えて、♀のみ入れて産卵に集中してもらいます。
これでセット完了です。
しかしここでも一つ重要な事があります。それは産卵セット時の管理温度です。サタンオオカブトの産卵セットを組む際には、幼虫飼育の時と同じように低温飼育(18~20℃位)の環境におく必要があります。管理温度が高い親♀が気に入らず産卵しなかったりする場合がありますのでご注意下さいませ。
サタンオオカブトの産卵セット自体は特別難しいものではありませんが、低温飼育、この温度帯(18~20℃位)をキープ出来るかどうかで産卵の結果が大きく変わってくるといっても過言ではありません。とても重要なポイントですので、ご注意下さいませ。
その後は♀が卵を産んでくれるのを待って割り出しとなります。
如何でしたでしょうか?上記が私:Shihoが行っているサタンオオカブトの産卵方法です。ポイントでまとめると、特に重要な点は、
①:管理温度(低温:18~20℃位)に気を付ける
②:交尾をさせるまで親虫♂♀をしっかりと熟成させる
③:可能ならば交尾を確認し、交尾成立を見届ける
だと考えます。
逆に言えば上記の点に気を付けて行えばそこまで難しい種ではないと思います。
南米ボリビアの幻のカブトムシ、サタンオオカブト。皆様も是非機会がございましたら飼育にチャレンジしてみて下さいませ。
※今回ご紹介させて頂きました飼育方法はあくまでも私:Shihoが行っているやり方について書かせてもらっております。飼育の方法にルールはございませんので、やり方はそれぞれ千差万別です。あくまでもご参考程度にご覧頂ければ幸いです※
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2015年12月11日
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使用したアイテム
Basicプロテインゼリー(昆虫ゼリー), 完熟Mat(昆虫マット・発酵マット), 飼育ケース, 黒土マット(昆虫マット・発酵マット)
こんにちは。いつもお世話になっております。 スレ違いになりますが、ご容赦を。 貴園から、(1)タランドゥスオオツヤクワガタ(CB)・(2)ダイオウヒラタクワガタ(WD)・(3)アトラスオオカブト(WD)・(4)アルキデスヒラタクワガタ(WD)・(5)スマトラヒラタクワガタ(WD)、の成虫5ペアが届きました。 レアな種類なので、繁殖・飼育方法についてご教示頂けますでしょうか。 まずは、基本的な質問ですが、季節は冬になりますが、今からでも繁殖は可能でしょうか?それとも、春まで待った方が良い?寿命の事もあるので、可能なら今から挑戦しようと思っています。 産卵については、貴園のDBを検索したら、(1)は2012/09/04の日記に、(2)は2014/01/30の日記に、(3)は2015/06/14の日記に、(4)はクワガタ飼育マニュアルの種類別解説に、記載がありました。現在までのところ、その方法で問題ない?(5)については記載が見つかりませんでした。ご存知でしたらご教示頂けますでしょうか? どれも、ペアを一応コバエシャッター小ケースに入れて、ハンドペアリングに挑戦してみました。(3)アトラスオオカブトは、速攻で交尾を始め、ずっとくっついて♂はギシギシ鳴きながら体を震わせていました。(1)・(2)・(4)は一応股がりましたが、暫くして離れてしまいましたので、そのまま同居させています。(5)スマトラヒラタクワガタだけは、2度も♀を♂が噛み潰そうとしたので、やむなく別居させました。WDなのでそのまま産卵床入りさせるか、それとも♂の歯を縛って同居させるか。 ヒラタクワガタ3種の♂にはいずれも私は指を噛まれ、右手指に2か所皮膚を貫通する負傷を負いました(涙)。今度からは、工事用手袋を用意して素手では触らないようにします。 何か特に注意すべき点など、ご教示頂けると幸いです。 お忙しいかと存じますが、何卒宜しくお願い致します。
Comment by Puffin — 2015年12月12日 @ 10:10 PM
Puffinさん レスありがとうございます。飼育担当のShihoです。 (5)のスマトラヒラタクワガタについては2015年3月24日の飼育日記に幼虫飼育&産卵方法について記載しております。そちらをご覧頂ければ幸いです。 (1)~(5)までの種、全て冬季でも産卵&幼虫飼育ともに可能です。日本は四季があるので、日本産のクワカブに関しては冬場の産卵は難しいですが、(1)~(5)の種類においては四季がない地域ですので、一年中を通して養殖が可能です。 ただし、温度管理が必要になります。 見た所、(1)、(2)、(3)、(5)の種は25~28℃の温度帯をキープさせれば産卵はOKかと思います。 (4)のアルキデスヒラタだけは比較的低温を好みます。過去に25℃程度でも産卵させた実績はありますが、20℃前後に設定した時の方がより多く産んでくれました。他の4種よりは少し温度低めの所で管理するとより良いと思います。 (5)のスマトラヒラタはWDならばそのまま♀のみで産卵させてみても良いと思います。寿命は比較的長い種なので、一度♀のみで産卵セットを組んでみて、それで産まなければ、その後に♂をかけてみても遅くはないと思います。 ただ生き虫ですので寿命は絶対とは言い切れませんが、私はWDの場合はほとんど全ての種、まずはそのまま♀の持ち腹を期待して交尾なしで産ませまています。 他に気を付ける点としては、 タランドゥスはレイシ材、カワラ材、もしくはカワラ菌床使用で産卵させます。CB個体ならば熟成が大事なので、羽化日~少なくとも4~5ヶ月位は経過(後食開始~2、3ヶ月程度)した際にブリードさせると産卵数も増えます。 羽化日や後食開始日が分からない場合は、ゼリーを凄く食べるようになった時、もしくは体をバイブレーション(振動)させるような行動を起こすようになった時、マット上を頻繁に徘徊するようになったとき等の行動を目安にしてみるのも良いかと思います。 タランドゥス以外の他の種はマット産卵で産卵が可能です。こちらは比較的産卵も容易だと思います。(ただしアルキデスヒラタは少し低温気味で) 大体このような感じでしょうか。 やり方は人それぞれですので、あくまでご参考までに聞いて頂ければ幸いです。 よろしくお願い致します。 飼育担当:Shiho
Comment by tsukiyono — 2015年12月13日 @ 12:08 PM
いつも迅速なお返事、誠にありがとうございます。 スマトラヒラタクワガタは、「クワガタ」を抜いて「スマトラヒラタ」で検索し直したら、日記見つかりました。 なるべく最適な材料を使用してあげたいので、くわマット・完熟マット・産卵終了後の飼育ケースを、早速貴社にて購入しました。きのこマットはプレゼントで50Lあるのですが、これは幼虫飼育に使う予定です。 タランドゥスオオツヤクワガタ用のカワラ材だけは貴園で販売していなかったので、他社で購入しました。太いもの(14㎝~20㎝)が良い、との事でしたので探すの苦労しましたが、何とか入手出来ました。貴園でも、今後販売していただけないでしょうか? 本年7月から飼育を始めて、どんどん深みに嵌って現在、成虫42頭・幼虫25頭になってしまいました。お世話、大変ですが、大切にしてあげようと思っています。外国産ヒラタクワガタだけは、♂を触るのが怖い(噛まれた時に明らかにクワガタからは「殺意」を感じました。これが犬くらい大きかったら、多分殺されていました。)ですが、しっかり防護して触るようにします。 問題は、万一繁殖が成功し過ぎて爆産した場合に、飼育し切れるか。今はリビングの1角で「冷やし虫家」2台と出窓スペースに積み重ねていますが、どう考えてもこのままでは無理なので、8畳間1部屋をクワガタ専用部屋にする事にしました。「冷やし虫家」も、低温飼育用にもう1台導入予定です。 また折に触れ、投稿させて頂きます。 今後ともよろしくお願いいたします。
Comment by Puffin — 2015年12月13日 @ 7:23 PM