ユーロミヤマ(ユダイクス、アクベシアヌス、ケルブス共通)の飼育方法(幼虫飼育&産卵)について
飼育日記のレスに毎度おなじみ、takeruさんより、以下のような質問がありました。
今回の質問はユダイクスミヤマクワガタに関してです。
ひょんな事から3令幼虫ペアを入手しまして、いざ飼育と思いましたが何処を探しても飼育情報が少なく困っております。
ミヤマということなので低温飼育は必須かと思いますが、それ以外の重要ポイントを教えて頂けたら助かります。
出来ましたら幼虫飼育→成虫飼育→産卵までの注意点なども教えて頂きたいです。
takeruさん、いつもレスありがとうございます。
なるほど、今回はユダイクスミヤマの質問ですね?
では、今回はユダイクスミヤマを含むユーロミヤマ種(他にアクベシアヌス、ケルブス等)の飼育方法についてご紹介してみたいと思います。
takeruさんがご質問されたのはユダイクスミヤマですが、同じヨーロッパミヤマであるケルブス種、そしてアクベシアヌス種、そして意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、国産ミヤマクワガタも幼虫飼育~成虫飼育~産卵まで、ほぼ同じようなやり方で大丈夫と考えて頂いても良いと思います。
まずは幼虫飼育についてご紹介してみたいと思います。
<幼虫飼育>
【お勧めのエサ】
完熟マット、くわマット、きのこマット(後々のブレンド)
【使用している容器】
800cc~1400cc程度のブロー容器、またはビン容器
※幼虫の大きさ、♂♀によって使用する容器は異なります
【えさ交換回数】
約4~5回程度(マット劣化時などは例外)
【設定管理温度】
18~20℃前後
【羽化までにかかる大体の時間】
合計12~20ヶ月程度
※♂と♀、更に個体差があります※
幼虫飼育は管理温度を除けば、比較的容易な方だと言えます。
基本はマット飼育。弊社のマットでは、くわマット、完熟マット、きのこマットで羽化実績があります。
産卵セットから割り出した直後は、産卵セット時に使用した同じマット(新しいやつ)を使用するのが良いでしょう。その後成長に従って、しっかりとした高栄養のマット(弊社のマットで言えばきのこマットやくわマット)を少しずつブレンドしていくとより大型が目指せると思います。
何度も書いていますが、ミヤマクワガタを飼育する上で一番重要なのは管理温度だと考えます。基本18~20℃前後で管理するのが良いと考えます。
高温飼育で管理した場合、幼虫期間中は落ちる個体は意外にも少ないですが、後々、蛹化前になって影響が出始める事が多かったです。いつまでたっても蛹化しない幼虫、蛹化不全、蛹化の段階で死亡する個体等が多発しました。
それを考えるとやはり通年を通して低温管理(18~20℃)の必要性があると考えます。
<成虫管理&休眠期間>
次に成虫管理です。
ユダイクスを含むミヤマクワガタの場合、個体によってはかなりの羽化ズレが発生する場合があります。
同じ同血統の同兄弟同士でも一年で羽化する個体もいれば、二年ほど経過して羽化する個体も存在します。しかも体長はほぼ差がないのにです。この原因ははっきりとは分かっておりません。
羽化をしたら、マットを深く敷いた容器に入れ、後食を開始するのを待ちます。
羽化したらしばらくの間は休眠期間となります。
この休眠の期間についてもそれぞれ個体差があり、一概にはどれ位だとは断言は難しいです。過去の経験では半年程のものや一年程のものもありました。
後食を開始するまで管理するマットが乾燥しないように注意しましょう。成虫がマット上を頻繁に徘徊するようになると後食が近づいた合図と思っても良いかもしれません。
<交尾開始時期>
後食開始すれば、約1ヶ月半程度で交尾&産卵が可能になると考えます。
その間来るべき交尾&産卵に向けてしっかりとエサを与えましょう。
特に♀には高蛋白質なものを与えてやると良いと思います。
<交尾方法>
♂♀が熟成し、時が来たら交尾をさせましょう。
やり方は
・ハンドペアリング
・同居ペアリング
どちらかの方法でやるのがお勧めです。
ミヤマクワガタはハンドペアリングで上手くいくときもあります。
しかしなかなか成功せず難しい場合は同居交尾の方法で交尾をさせましょう。
この時♂は結構気性が荒いので、♀を攻撃してしまうことが多々あります。
あまりにも♂が攻撃的な場合には、相性の問題もある場合がありますので、複数の候補がいる場合は、相手をチェンジしてみるのも良いと考えます。
またその♀一頭しか候補がいない場合は、後日仕切り直しをする。
もしくは♂が攻撃できないように♂の大アゴを縛ってしまうとう荒療治を施す方法もあります。
同居交尾の場合、セットして数日後、様子を見た際に、「♂と♀が近くにいる」、「エサを一緒に食べている」、等の光景が見られれば、絶対とは言い切れませんが、とりあえず交尾は成功していると考えても良いかと思います。
<産卵方法>
交尾が上手く行き、次に産卵方法についてご紹介してみたいと思います。
【産卵に使用する親虫】
♂♀共に熟成している個体
【産卵に使用するお勧めマット】
黒土マット、完熟マット
【産卵に使用するお勧めケース】
クリーンケースM~L程度
【産卵セット期間】
セット開始後、約2ヶ月
【産卵管理温度】
18~20℃前後
【水分量(湿度)】
多からず少なからず
感覚としては手でギュッと握った時土団子が出き、それを手のひらで転がした際に形が崩れない程度の水分量
<産卵セットの組み方>
ではセットのやり方を画像に合わせてご紹介してみたいと思います。
主役のミヤマ♀を入れます。
セット方法を図示するとこのような感じです。
ミヤマクワガタの産卵ポイントは何といっても設定温度です。
18~20℃ この温度帯がカギとなります。
この温度をキープするのは普通のご家庭では難しいでしょうが、この設定具合によって全て決まるといってもおかしくないと思います。
温度設定さえクリアすれば案外普通に産んでくれることもあります。
しかし産卵数は♀によってバラつきがあり、産む♀は結構な数を産んでくれますが、産まない♀はゼロというのも珍しくありません。
次に産卵セットを組んだ後、今度はいつその幼虫の割り出し作業を行ったら良いのかについてご紹介してみたいと思います。
<幼虫割り出し時期>
基本的にはケース側面や底面に幼虫が見え始めてからになります。
卵や幼虫が1~2頭見え始めたからといってで早期に割り出してしまうと、まだ産む気がある♀の産卵活動を一旦ストップさせてしまうことがあるのであまり好ましくありません。
上記の数位見えてきたら、大成功!もう十分割り出しても大丈夫です。
ミヤマクワガタの♀はオオクワガタやヒラタクワガタ等によく見られる子食いの可能性は低いと思いますので、多少割り出しする期間を長く持っても大丈夫かと思います。
あくまで私の場合になりますが、大体産卵セット開始して、約1ヶ月半~2ヶ月程度を目安に割り出すようにしています。
ただし飼育ケース内の環境が急激に悪化したり、ケース側面や底面にまったく卵や幼虫が見られなかったり、♀が全く潜る気配を見せずマット上面を徘徊ばかりしている時は話は別になります。
今回は野外ものの♀はほぼ交尾が終了していると言っても過言ではないので、♀の持ち腹を期待して、そのまま♀のみを産卵セットに入れるやり方をご紹介しました。
しかし、♀がなかなかマットに潜る行動をしなかったり、何回かセットしても全く産まない場合は、♂がいるならば再交尾をさせた方が良い場合もあると思います。そのあたりは状況を見て臨機応変に対応してあげて下さいませ。
下の画像は過去に行ったミヤマクワガタ産卵セット(※国産ミヤマクワガタになります)割り出し風景です。
上手くいけばこのように幼虫を得られる機会も大いにあります。
いかがでしたでしょうか?
上記が私のユダイクスミヤマクワガタを含めたミヤマクワガタの飼育方法です。
何度も書いていますが、ミヤマクワガタを産ませるかどうかは温度管理にかかっています。低温管理をキープするのは難しいですが、何とか頑張って管理して下さいませ。
takeruさん、ご質問ありがとうございました。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。
※この方法はあくまでも私:Shihoのやり方です。やり方は人それぞれですので、あくまでご参考程度にご覧頂けますと幸いです。m〈_ _)m※
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2016年3月17日
カテゴリー
使用したアイテム
Basicプロテインゼリー(昆虫ゼリー), きのこMat(昆虫マット・発酵マット), くわMat(昆虫マット・発酵マット), 完熟Mat(昆虫マット・発酵マット), 飼育ケース, 黒土マット(昆虫マット・発酵マット)
Shihoさん 相変わらず大変迅速かつ丁寧なご返答ありがとうございます。 やはり大切なのは低温管理なのですね。 ただ幸運にも私の家には真夏でも18~20度の冷暗室がありまして、そこでサタンやタランドゥスの幼虫を飼育しておりますので低温管理は大丈夫だと思います。 こういう時は北海道に住んでて良かったと思います。 今回のユダイクスミヤマはギネス血統なのでかなり気合い入れて根気よく頑張ります。 ありがとうございました。 また分からないことがありましたら質問させて頂きますので宜しくお願い致します。
Comment by takeru — 2016年3月17日 @ 10:50 AM
shiho様こんちは♪以前にも質問をさせていただいた事があるかと思うのですが、ニジイロクワガタの産卵についてです。ペアリングは何度も確認済みで1度材に産卵はしたのですが、材のコンディションが悪かったのか割り出しした所卵にカビや線虫がいて全てダメになり、その後再セットしたのですが1ヶ月以上経過しても産卵ゼロでネットで少し調べた所境界型の産卵セットを組むと産卵率が良いと書いてあったので試みてみたのですが前回同様変化がないように思えます。やはりある程度温度管理が必要なのでしょうか?今セットしてから約2ヶ月ぐらい経っています。アドバイスお願いいたします。m(__)m
Comment by 吉原賢 — 2016年3月24日 @ 4:32 PM
吉原賢 さん レスありがとうございます。 飼育日記担当のShihoです。 私はニジイロクワガタはマットのみでよく産卵セットを組みますが、セットを組んだ時はケース側面や底面にも卵が見えていたので、境界部分以外にも産む事はあると考えています。 勿論外からは見えないですが境界部分にも産んでくれていると思います。 柔らかめの材を使用した時には材にも産んでくれていました。 また管理温度ですが、私的には25℃前後は必要だと思っています。 もしこの温度帯がキープ出来ていないのならば、もしかすると管理温度が原因なのかもしれません。 ある程度の温度がないと産卵のスイッチが入らないのではないかと思います。 他に考えられるのは、親の熟成ですね。 ニジイロは長寿な虫です。あくまで私のやり方ですが、私の場合、後食開始して約3~4ヶ月以上程度経過したもので交配&産卵させています。 ♂♀共に熟成していなかった場合(片方だけでもダメ)、交尾をしても無精卵や卵を産まないことがよくあります。 上記が考えられる予測の例ではありますが、参考程度に聞いて頂ければ幸いです。 よろしくお願い致します。 飼育日記担当:Shiho
Comment by tsukiyono — 2016年3月24日 @ 5:54 PM
shiho様適切かつ解りやすいアドバイスありがとうございます♪(^^)アドバイスを参考に試行錯誤しながら自分なりに更なる育成、産卵技術を向上させたいと思います♪立て続けの質問ですが少し前にそちらでダイオウヒラタクワガタWDペアを購入させてもらったのですが、雌雄別飼育で産卵セットを組みましたがエサはしっかりと食べ、潜りはするものの産卵の気配無しでペアリングしようとしてもお互いに興味を示さない。これもまた温度管理の関係等があるのでしょうか?
Comment by 吉原賢 — 2016年3月25日 @ 11:23 AM
吉原賢 さん レスありがとうございます。 ダイオウヒラタですが、産卵させるにはある程度の温度は必要です。 私がダイオウを産卵させる時は、25~28℃の温度帯をキープさせていtます。 WDなので持ち腹でもいけるとは思うのですが、もし産まないようならばペアリングをしてみると良いと思います。 ペアリングの際も25~28℃をキープしている場所で行う事が必要です。ヒラタ種は寒さに弱いので、温度が低いと活動も鈍りがちになりますので・・・。 ご参考程度に見て頂ければ幸いです。 よろしくお願い致します。 飼育日記担当:Shiho
Comment by tsukiyono — 2016年3月25日 @ 1:42 PM
大変参考になりました♪(^^)温度管理状態を安定させるのが少し難しい環境なので、焦らずに適温になってきた時期を利用して、温度に注意しながら頑張ります♪(^-^)v
Comment by 吉原賢 — 2016年3月26日 @ 4:57 PM