本土産コクワガタの飼育(産卵セット羽化):産卵セット後の放ったらかしの多頭飼育

お客様からのご質問の中に、

「クワガタを産卵セットを組んだ後、そのまま方っておいても羽化は可能ですか?」

というご質問を受けることが度々あります。

産卵セット後のいわゆる
ケース飼いによる多頭飼育です。

 

私自身、国産カブトムシの多頭飼育は経験しておりましたが、基本的にクワガタの幼虫は単独飼育をするので、この手の質問にはお答えが出来ていませんでした。

小型のクワガタならば産卵セット後のそのまま羽化でも可能ではないかと考え、敢えて本土コクワガタによるテストを行ってみました。今回の飼育日記ではその時の様子をご紹介してみたいと思います。

 

今季春頃に産卵セットした本土産コクワガタ
産卵木もボロボロになり、産卵されている事は確実でしたので、今回はあえて割り出さずに羽化させてみようと思い、そのままにしていました。

産卵セットを放ったらかしにしておいたらどうなるのか?いわゆる放ったらかしの多頭飼育を試みたわけです。

 

産卵セットを開始してからほぼ9ヶ月。
ケース底面を見てみると、蛹室がいくつか見え、どれも成虫になっているようだったので、思い切ってケースを暴いてみることにしました。

 

IMGP4123
上から見た産卵セットの様子です。

途中加水などはしなかったのでマットは乾燥気味ですが、何とか水分はまだあるようです。親♀用に置いていたゼリーなどは除去してあります。

 

左側の産卵材片をひっくり返してみると、
IMGP4124
いました。本土コクワガタ♀の新成虫です。

 

IMGP4125
手に取ってみます。
さすがに新成虫、ピカピカでとてもキレイです。

IMGP4128
前胸が鏡のように反射します。とても美しいです。

 

さて他の個体はまだ蛹室の中みたいですので、小さなマドラーを使って少しずつ掘り起こしていきます。
IMGP4130

 

IMGP4131
固い部分を発見。おそらく蛹室の上部分だと思います。
そーっとけずってみると・・・・

 

IMGP4132
穴がポコッと開きました。

 

覗いてみると・・・
IMGP4134
コクワガタ♂の大あごが見えました。
赤い、羽化したてのようです。

 

IMGP4135
本来ならば、そのままにしておくのですが、ここは産卵セット内ですので、個別に管理する為に取り出すことにします。そーっと慎重に蛹室を崩していきます。

 

IMGP4136
IMGP4137
ようやく全体が出てきました。

 

IMGP4138
手のひらにそーっと乗せてみます。
まだ羽も固まっておらず、とても柔らかい。お尻も完全には引っ込んでいません。少し力を入れただけで潰れてしまいそうです。まだ黒くなっていませんが、この赤っぽい状態でもとても美しい。とてもキレイです。体長はなかなか大型ですね。♂40mm位はありそうです。

 

次に別の蛹室を掘り出していきます。

IMGP4139
こちらは♀のお尻。

 

IMGP4149
こちらも♀

 

IMGP4144
次々に出てきます。

 

IMGP4145
でも全ての個体が順調なわけではありません。この個体は羽化不全により死亡しています。

 

IMGP4148
こちらは3令後期で死亡したようです。真っ黒になっています。

 

結果、新成虫が

♂:5頭
♀:9頭

合計14頭出てきました。

 

 

ちなみにこの時組んだ産卵セットの内容は

<産卵セット~羽化時までの内容>

【累代】
天然ものWD♀を使用
【羽化までにかかった時間】
産卵セット開始より約8ヶ月
【使用したマット】
完熟マット+クヌギ材2本
【途中での加水】
無し
【使用した容器】
クリーンケースL
【水分量】
手でぎゅっと握って団子が出来て、なおかつ水が染み出ない程度
【設定温度】
25℃前後
【セット方法】
ケース底面を固くつめ、材を入れ、その回りも固く詰める。上部2~3cmほどは柔らかくマットを入れる。少し材の頭が出るようにセット。

 

セット方法を図示してみました。以下の様な感じです。
(※図では2本の材は平行セットになっていますが、Tの字でセットでも構いません。)

産卵方法3

 

こんな感じで組みました。

 

如何でしたでしょうか?
今回、「産卵セットを組んだ後、幼虫を放置していたら、ちゃんと羽化するのか?」

このテーマを確認したくてやってみましたが、結果的には思いのほかまずまずの結果がでました。

 

この放置した産卵セットからは計14頭の本土コクワガタ成虫がそのまま羽化。

クヌギ材2本と、完熟マットをエサとし、羽化しました。

 

しかし多頭数の幼虫が羽化するにはクヌギ材2本では少ないようですね。

材は全て食いつくされており、その後幼虫はマットへと移動し、そこでさらに育ち、羽化した様子です。

また羽化した頭数も14頭ですので、そこまで数は多くありません。本来のコクワガタの産卵数から考えると、やはり途中での死亡がかなりあったのではないかと推測されます。

上記の産卵セット内容で、そのまま羽化まで管理するとなると、やはり少しエサ不足になるような気がします。なので最初の産卵セッティングの段階でマットを少し多めに入れてやるとエサ不足も多少は軽減されるのではないかと思います。

 

今回の結果を私なりに考えると、

「本土コクワガタクラスの小型クワガタならば、産卵セット後のそのまま羽化も可能だが、最後まで育って羽化する個体は少なくなるように感じました」

産卵した幼虫をなるべく無事に羽化させるには、やはり適度な時期に割り出して、個別飼育してやるのが一番数的も多く羽化させられるのではないでしょうか。

ともあれ、無事に羽化してくれてありがとうですね。(^^)

 

※ここでご紹介させて頂いた考え方や飼育方法はあくまで私Shiho個人のやり方&考え方であってそれを押し付けるものでは御座いません。あくまでもご参考程度にご覧頂ければ幸いです。よろしくお願い申し上げます。

[`yahoo` not found]
GREE にシェア
このエントリーをはてなブックマークに追加

2 Comments »

  1. こんにちは、本土コクワガタの記事、拝見させて頂きました。 何故か皆さん、コクワガタに関しては意外とそのままの方が多いように感じ、コクワはやはり なえがしろにされ気味なのかな?なんて感じたりもしてしてます。 確かに、わりとどこでも採れる種類なので気持ちも分からなくはありませんが・・・。 自宅でもコクワガタWDを飼育してますが、ちょっと大きめのブリードケースに16匹ほど 共同で生活させています。不思議と殺しあいはありません。 ただ、定期的に材を確認して、幼虫を取りだしてます。 取り出した幼虫は、御社の菌糸ビンEP800、1本飼育で行ってます。 残前ながら、全ての幼虫というわけにはいかなくて、ある程度大きくなりそうな 個体を選んで菌糸ビンに入れていますが、さすがに御社のEP800は伊達では無く 去年7月頃に2匹のオスがそれぞれ50ミリと51ミリを達成しています。 温度は常に22~23℃設定です(オオクワガタや外国産ヒラタと同居しているので) コクワガタも50ミリを超えるとなかなか迫力があって格好良いです。 今後も定期的に幼虫を取りだし、菌糸ビン飼育を続けていこうと思っていますが、 もっと大きな個体が出ると良いななんて思っています。 コクワガタとはいえ、大きくするにはかなりの知識と知恵と環境が必要です。 やはり、クワガタ飼育って奥が深いと思いました。

    Comment by 西本 貴律 — 2017年1月9日 @ 11:29 AM

  2. 西本 貴律さん レスありがとうございます。 飼育日記担当のShihoです。 コクワガタ50mmと51mmですか!素晴らしいですね。 チャレンジ精神も素晴らしく、そう聞くと刺激を受けました。 私も大型個体の作出に是非挑戦してみたいと思いました。 また色々と御近況などございましたら、是非お聞かせ下さいませ。 楽しみにしております。 ご投稿ありがとうございました。 飼育日記担当:Shiho

    Comment by tsukiyono — 2017年1月10日 @ 10:51 AM

RSS feed for comments on this post. TrackBack URL

Leave a comment

月夜野きのこ園
〒379-1305 群馬県利根郡みなかみ町後閑1170/0278-20-2060
TSUKIYONO KINOKOEN All Rights Reserved.