角曲がりになる可能性の高い蛹室の形状:ヘラクレスオオカブトの例【Shiho的見解】
先日お客様より、
「大切に飼育して来た、ヘラクレスオオカブトが角曲がりになって羽化して来た」
とのお嘆きのお声をお聞きしました。
幼虫期間の長いヘラクレスオオカブト、管理温度によっては2年近く時間がかかる場合もあります。
その長い間、天塩にかけて育てて来たものが、角曲がり個体や羽化不全個体だと悔やんでも悔やみきれません。
かくいう私もかなりの数の角曲がりヘラクレスを羽化させた失敗例がございます。
今回の日記では、なぜ角曲がり個体になってしまったのか?
その原因と対策を私:Shihoの個人的見解では御座いますが、ご紹介してみたいと思います。
あくまで私:Shihoの飼育方法ですが、ヘラクレス種♂の場合、私はクリーンケースS程度の容器に入れて蛹化させます。
とても小さなケースですが、数やスペース的に考えるとこの方法が一番効率が良いからです。
※ もちろん大きなケースで管理すればするほど角曲がりの可能性は低くなると思われます※
その場合、幼虫がケースの長い部分や対角線状にキレイに蛹室を作ってくれれば、蛹室の形状としてはほぼ成功と言えます。
図的に説明してみると、
ケース底面の図
側面から見た図
小ケースや中ケースで蛹室を作った場合、ほとんどがケース底に作りますので蛹室の形がケース底から見えます。
両側面からみて蛹室の窓の様な空間が見えず、長い方向に作った場合には、幼虫が作った蛹室をそのまま使います。
側面から見た図
蛹室をケース底見て片寄った場所に作った時には大抵側面から蛹室の窓の様な空間が見えます。
その場合には角曲がりになってしまう可能性が高いので人工蛹室へ移し角曲がりを防止すると良いと考えます。
では、ここで実際の様々なパターンの蛹室画像がありますので、ご紹介してみたいと思います。
※ケースの対角線状に蛹室を形成した蛹室の成功例※
きちんと角曲がりなく羽化して来てました。
※ケースの長い方向に平行に蛹室を作った成功例※
こちらは蛹ですが、角曲がりなく綺麗に蛹化しております。
ただいつもこう上手く蛹室を作ってくれるわけではりません。
というか、このように上手く作ってくれる割合の方が低いと思います。
では、そのダメな蛹室はどのようなものなのか?
その例がこちら、
狭い窮屈な部分に不完全の蛹室を作ってしまいました。
ケース側面から見ると、まん丸の「窓」のような空間が出来てしまっています。
本来ならば、もっとその先に蛹室の完全体を作りたかったのに、製作途中でケース側面に突き当たってしまったため、その先が作れず窓のようになってしまったんです。
このように側面から「窓」のような空間が見えるように蛹室を作ってしまうと、高確率で角曲がりになる可能性が高くなります。
そして上記蛹室より実際に羽化して来た個体が、
こちらの個体になります。
胸角が先に伸びきらず見事な角曲がりとなってしまいました(泣
過去にも沢山角曲がり個体を出して来ました。
【ヘラクレス・オキシデンタリスの角曲がり個体】
【ヘラクレス・レイディの角曲がり個体】
体長100mm程位しかない小型のレイディでさえ蛹室の形状が悪いと角曲がりになってしまいます。
こちらの幼虫(前蛹状態)も不全的な蛹室を作ってしまっています。
側面から見ると、やはり「窓」のような空間を作ってしまっています。
これではこのまま蛹化した場合、蛹化不全(角曲がり)になる可能性はかなり高いと言えます。
ではどうするのか??
対策方法としては、前蛹状態になってから人工蛹室に移行させてやることをお勧め致します。
【ヘラクレス用の人工蛹室作成例】
人工蛹室に移したから100%大丈夫だとは確言は出来ませんが、そのまま蛹化させるよりもリスクは少なくなると考えています。
こちらの蛹室は、やはり狭い部分に作ってしまいましたが、よく見ると「窓」が出来ていません。
これならば蛹化した時、角曲がりの蛹になる可能性は低いと思われます。
一応成功例の蛹室だと思います。
さて、移行させるための人工蛹室ですが、今回はここまでで既にかなり文章が長くなってしまいましたので、人工蛹室の作り方については次回の日記でご紹介したいと思います。
※ 今回ご紹介した考え方ややり方はあくまで私:Shiho個人の考え方によるものです。人それぞれやり方も考え方も違うと思いますので、あくまでご参考程度に読んで頂ければ幸いです。ご了承下さいませm(_ _)m ※
2 Comments »
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質問失礼します。
もし、前蛹になる前(手と口が固まる前)に蛹室から人工蛹室に移してしまい人工蛹室が破壊された場合どうすべきでしょうか?
もとの蛹室に戻すのが正解ですか?
Comment by おむ — 2020年10月5日 @ 5:29 AM
おむさん
レスありがとうございます。
あくまで私の考え方になりますが、手と口が固まる前に人工蛹室に移し替えてしまうと、ほぼ高確率で人工蛹室を壊し、また蛹室を作ろうとします。
元の蛹室が完全のままで残っているようならば、そのまま戻してやれば良いかと思いますが、一旦スイッチが入ってしまっている場合、また蛹室を作り直す為にそこも壊してしまう可能性もあります。
あまり何度も蛹室を作り直させると、どんどん体重が減って来て、羽化するまでの体力が無くなって来てします場合もありますし、また羽化しても体重が減ってしまっている分、より小さな個体が羽化してしまう可能性もあります。
あくまでも私個人の考え方ですので、ご参考程度にして頂ければ幸いです。
飼育日記担当:Shiho
Comment by tsukiyono — 2020年10月5日 @ 8:25 AM