9月に入りましたね。

私が住む宮崎でも種類によってはまだまだクワガタ達は見かけることは出来ますが、月夜野きのこ園本社がある群馬の方では、「朝がかなり涼しくなって来て、クワガタの姿はほとんどみられなくなりました」とのこと。

こういった話を聞くと、「今年も終わったのかなぁ・・」と寂しい気持ちになってしまいますね。

 

今年の夏に採集して大事に飼われていた虫達も、一部の種を除いて次第にお亡くなりになって来る頃だろうと思います。

 

野外採集をされて採集した大事な虫、もしくは飼育(ブリード)していた大切な虫が死亡した場合、皆さんはどうされていますか?

安らかに眠らせてあげるように土に還す方もいらっしゃるでしょう。

またあるいは思い出にと、その個体を大事に標本にしていつまでも手元に置いておくという楽しみ方もあると思います。

 

大切に育てた、夏の想い出のつまった大切な昆虫を大事に残したい。

そんな想いを形にするには「想い出標本」がおすすめです!

採集や飼育で大事に育てた虫達をきちんとした形にして残しておけば、虫に対して感謝の気持ちも愛着もこれまで以上にわいてきます。

 

今回の飼育日記では月夜野きのこ園でご紹介している「標本の作り方」についてご紹介してみたいと思います。

※この記事は毎年ほぼ同じ内容で掲載させて頂いております。今年より初めて標本に挑戦する方も多くいらっしゃいますので改めて掲載させて頂きました。記事内容&画像が重複しますことをご了承下さいませ※

 

 

でも標本って作るの大変そう・・・

 

そんなふうに思われがちですが、実は標本は「乾燥させるだけ」で大丈夫なんです。 ですのでここでの紹介は特別な薬品などの用意はいりません。このページでは月夜野流の標本作りをかんたんな3ステップでご紹介します!

 

 

★★★標本つくり方の3つのステップ★★★

 

ステップ① 「カチコチに固まった昆虫をほぐす(軟化)」
ステップ② 「昆虫針を昆虫に刺す(貫通させる)」
ステップ③ 「形を整える(展足)」

お亡くなりになってしまった昆虫は固く乾燥しているか、お亡くなりからあまり時間の経っていないものが良いです。 また、体がグニャグニャするものは腐敗防止の為にも一旦乾燥させてからの方が扱い易いです。
今回は乾燥して体が固くなっているものを用意しています。

 

〜用意するもの〜

①段ボールか発泡スチロールのような針が刺しやすい板
②固定用の針、マチ針でもOK
③使い古した歯ブラシ
④木工用ボンド(足が取れたりした場合の修復用)
昆虫針、今回は6号というものを使います。
⑥有れば便利、ピンセットや先の細長い物、竹串や楊枝
⑦お亡くなりになった昆虫

 

まずは昆虫を洗いましょう!
お亡くなり後、そのままの状態で乾燥していますので、体に付いたオガやゴミを水で洗い流し、歯ブラシなどでキレイに汚れを取り除きます。 

汚れを落としたら次に50~60度のお湯に漬けます。 (熱湯に入れてしまうと眼が白くなってしまいますのでご注意!)。昆虫の乾燥具合で柔らかくなる時間が変わってきますが、30分~1時間位で柔らかくなってきます。

 

足の先端の方から柔らかくなってきますので昆虫の足を動かしながら確認していってください。 まだ固いようであればさらに漬けてください。 
足がだいたい動かせるようになったらお湯から引き揚げます。

 



昆虫がやわらかくなったらティッシュで水気をきって発泡スチロールの上に置きます(この時、足を全体に広げるように置きます)。 うまく広げられたら初めに1本昆虫針を刺します。 刺す位置は真ん中よりやや右です。真ん中だと背中の羽<翅>が開いてしまったり、形が崩れてしまいます。

結構固いので、抑えの板なんか有ると便利です。あと、ラジオペンチを使用するとより簡単かもしれません。(両手を添えると刺しやすくなります(1人での撮影のためここでの画像は片手ですが、、、)。

針の刺さり具合ですが、一旦上部の羽(翅)が貫通したら角度を確認します。前、後ろから確認して垂直に刺さっていれば、角度に気を付けて下まで貫通させます。 針の上部1.5cm位を目安にしてください。

 

ちなみに標本の道具で平均台という物があり、あると針の差し込みの時に便利です。


一番上段の大きいほうの穴に針の頭を差し込み、グイっと一気に押しつけます。
すると、丁度良い刺し具合になります。

 

さてお次は昆虫の形を整えていきます。まずは、このままだとクワガタが回転してしまうのでお尻の方を針で抑え、次にアゴをお好みで広げて針で固定します。標本の形は図鑑などに載っているものをお手本にするのがわかりやすくておすすめです。

 

では、後ろ足から形を整えていきます。

ここで一つポイントがあります。出来るだけ左右対称に整えてあげましょう! 
それと、足をなるべく縦になるように針で固定します。ピンセットを使って整えてから固定すると上手くいきました。足の固定は針を十字に刺すと安定します。

 

そして、足の爪を開かせます。足の爪を開かせるとよりぐっと標本っぽく見えてきます。

次に中足です。この足も少し癖がついていたのでピンセットで少し引っ張りながら整えました。 
もともと爪が開いている足は針の固定はしていません。
要するに整って乾燥出来ればそれで良いのです!

 

ここでポイント!「触角をお忘れなく!!」 
私はついつい終わってから気がつくことが多いです、、、。
眼の下の方に折りたたまれているので、細い棒で出してあげます。

 

中足も整えて、なるべく左右対称にします。
整え終えたら、あとは乾燥させて出来上がりです。

 

乾燥する際は風通しの良い日陰で干してください。もともとの昆虫の乾燥具合にもよりますが、 2週間~1ヶ月が目安です(大きいものだと1ヶ月以上かかる場合もございます)。 また乾燥期間中に少しずれたりすることもありますので時々チェックして微調整しましょう。

同じ要領でメスも隣で整え(展足)ました。オスメスの形を揃えると奇麗に見えるのでおすすめです!

 

乾燥できたら標本箱に納めてみましょう。
自分の思い出が残るっていいですね~!うん、かっこいい!
※標本箱の中には一緒に防虫剤を入れる事をお勧め致します。

 

鑑賞用でだけでなく、 データも残したい場合はラベルを作成しましょう!

【野外採取の場合】①何時 ②何処で ③誰が採った
この3つが基本です。

【飼育の場合】①昆虫名 ②産地(~産) ③累代
やその他飼育中の管理の仕方など表記しておくとよいかもしれません。
ラベルは標本昆虫の針に一緒に刺しておきましょう。

他にも 想い出深いエピソードを記載しておくのもおすすめです! 自分なりに工夫したり楽しみながら標本を増やしていけたらより楽しめると思います。

 

【まとめ】

ステップ① 「カチコチに固まった昆虫をほぐす(軟化)」

・昆虫は歯ブラシなどで水洗いする。
・50~60度のお湯に30分~1時間位漬けこみます。
・関節の動き具合で確認し、固いようならさらに漬けこむ。

ステップ② 「昆虫針を昆虫に刺す(貫通させる)」

・昆虫針を刺す時は支え板やラジオペンチを使うと刺しやすいです。
・貫通させる前に針の角度を垂直かを確認してから貫通させる。

ステップ③ 「形を整える(展足)」

・形を整えるにはまず昆虫が動かないよう大まかに固定してから細かい所を整えていく。触角を整えるのを忘れずに!
・乾燥期間の目安:乾燥にはオオクワ♀なら3週間が目安。オオクワ♂70mm程度の大きさなら1ヶ月以上。オオヒラタやオオカブトなど体長80~150mmのものは3ヶ月以上かかる場合もあります。元々の扱う昆虫の乾燥具合にもよりますので確認しながら乾燥させて下さい。
・データを残したい場合はラベルを作成、標本昆虫の針に一緒に刺しておく。

【ポイント】
・基本的にはルールは有りませんが、左右対称にする事や足の爪を開かせたり触角を整えるとより標本っぽく奇麗に見えます。
・有る程度数を並べるのであれば整える形に一貫性を持たせると並べた時に奇麗に見えます。

 

 

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上記までは月夜野きのこ園HP上でもご紹介している「標本の作り方」です。

後はこんなのもあった方が良いな、こんなやり方もあるよ、と思うものをShiho的に少し補足してみました。

 

【酢酸エチル、もしくは除光液での防腐処理】

標本を作製するには死亡した虫を乾燥させるだけでも勿論大丈夫です。
月夜野きのこ園的には自然乾燥をお勧めしますが、中には防腐処理をしておきたいという方もいらっしゃると思います。

そんな方達の為に防腐剤について少しご紹介しておきたいと思います。

 

防腐剤として主に使用されるものには、「酢酸エチル」もしくは「除光液」などがあります。

本来ならば、純度の強い「酢酸エチル」の方が望ましいのですが、こちらは劇薬の為、簡単に入手することが難しく、最近では薬店でも販売や取り扱ってくれない所が多いです。

 

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上記画像は「酢酸エチル」

 

また取り扱っている場合にも購入には「用途説明」や「身分証明書提示」等、何かと手続きが必要な場合があります。

 

この「酢酸エチル」の代用品として「除光液」を使うという手もあります。
「除光液」とは女性が爪等につけるマニキュアなどを洗い落す液体のことで、この除光液の中には「酢酸エチル」が含まれているものがあります。

勿論「酢酸エチル」より効き目は強くはありませんが、それでも何もしないよりは効果はあると考えます。

こちらは化粧品店や薬店、場合によっては100円均一ショップでも販売しています。購入する際にも身分証明書なども必要ないので、とてもお気軽に入手することが可能です。

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上記は100円均一ショップで入手した除光液。

 

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成分ラベルに「酢酸エチル」と書いてあるものを入手しよう。

 

★★酢酸エチル&除光液の使用方法★★

酢酸エチル、もしくは除光液を手に入れ、防腐処理の方法をご紹介します。

気密性の高いビンなどにティッシュペーパーを数枚入れ、そこに液を数滴~適量入れ、ティッシュペーパーに染み込ませます。液はなるだけ染み出ないようにし、気化させた蒸気で防腐処理を促します。

 

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密閉したビンに入れたノコギリクワガタの死亡個体。

ティッシュペーパーは除光液の色を染み込んでピンク色になっています。

 

実は本当は、生きたままの生き虫を入れた方が防腐剤としての効き目は強いそうです。

ただし勿論入れた昆虫は死ぬことになりますが、呼吸器から防腐剤を吸い込むことで更に防腐効果が強まると聞いていますが、私には抵抗があり、ちょっと無理ですね。

 

 

【展足した後、標本を乾燥させる方法】

皆さんは昆虫を展足した後、どのように管理されていますか?

上記の説明でも書いているように展足が完成し、昆虫が乾燥するにはかなりの時間がかかります。

問題はその間の管理方法です。

もう10年以上前の話ですが、当時よく標本を作っていた私は、展足を終え、完成した標本を乾燥させていました。

当時はそのまま日の当たらない日陰に置いてそのまま放置しておいたのですが、まだ十分に中が乾燥していない間は腐敗臭がします。

その腐敗臭に引き寄せられ沢山のハエが外部からやって来て、結果的にそこに卵を産みハエの幼虫が沸き、標本がダメになったものも出てしまいました。

その時は酢酸エチルがあったので、生体の死亡後は酢酸エチルで防腐剤処理をしていました。最初は酢酸エチルの強烈な臭いでハエは集まらなかったのですが、時間とともに酢酸エチルの臭いは薄れていくので集まってくるようになりました。

 

なので、標本を乾燥している間、外部からハエなどの虫が集まらないようにしておく工夫も必要だと考えます。

そこで私はその後はタッパー等の気密性の高い容器の中で乾燥させるようにしました。風通しが良くありませんので、勿論外で乾燥させるより時間はかかりますが、ハエなどの外敵から守るには仕方ありません。

 

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少しでも乾燥を助ける為、乾燥剤を入れておくと良いです。

 

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きっちりとフタをして外部からのハエ等の侵入を防ぎます!

 

数ヶ月後、乾燥が終了し、標本が完成した後は、

 

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標本箱に入れてみましょう。

きっちりと並ぶ姿はさぞかし美しいでしょうね。

 

 

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ミヤマ標本乾燥1

 

ヒラタ標本乾燥1-1

 

ノコギリ標本乾燥3-1

昨年私が展足した標本個体

 

今回色々と標本作成について書いて来ましたが、特別なルールはないので、個々で色んな形にしても楽しいので、 是非、みなさんもチャレンジしてみてください!!(^^)

 

※この方法はあくまでShiho&月夜野きのこ園流のやり方です。人それぞれによってやり方は様々です。 あくまで参考として見ていただければ幸いです。

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